桃園機場捷運(とうえんきじょうしょううん)または桃園捷運機場線(とうえんしょううんきじょうせん)は台湾桃園国際空港を経由して台北市と桃園市を結ぶ桃園捷運の捷運路線。正式名称は台湾桃園国際機場聯外捷運系統(たいわんとうえんこくさいきじょうれんがいしょううんけいとう、Taiwan Taoyuan International Airport Access MRT System)。2017年開業。
路線全長は51.03km。全線が桃園捷運の路線、 機場線として運営される。台北市内および空港周辺の駅のみ地下線で、その他の区間はほぼ全線が高架線である。主要駅のみ停車の直達車と、各駅に停車する普通車で運行される。
概要
台湾の空の玄関である台湾桃園国際空港は、1979年の開港以降、高速道路以外に台北市との交通アクセスがなく、旅行者は、自家用車かリムジンバスを利用する以外、空港へのアクセス手段が確保されていなかった。この問題を打開するために、行政院交通部は、西門町を起点とするゴムタイヤ方式での中正機場捷運として全長35.7kmの空港連絡鉄道の建設を計画し、1998年に、一旦、BOT方式による鉄道路線の建設が決定したが、2003年に計画の中断が発表され、未成線になった。
この間、採用する鉄道形態とルートをめぐって様々な議論(捷運方式、トランスラピッド方式、台湾鉄路管理局林口貨物線の旅客線化方式、台湾高速鉄道新線建設方式)が行われ、最終的に捷運方式による運行が2005年に決定された。また建設方式は、従来のBOT方式を断念し、交通部高速鉄路工程局と三重駅以東は台北市政府捷運工程局の官直轄による建設方式が2004年に決定された。同じく中断されていた空港と桃園県内を結ぶ■桃園捷運藍線(空港 - 中壢市龍岡)の計画の一部を統合して桃園国際機場捷運として再始動した。
その後、2005年に入札が行われ、『日本連合(丸紅・川崎重工業・日立製作所)』、『ドイツ・シーメンスグループ』、『フランス・台湾連合(アルストム・CTCI)』の3者が応札した結果、2006年に日本連合が、鉄道システム一式及び車両基地建設契約を受注した。この日本連合による落札は、アジアにおいて、日本企業による初めての空港連絡鉄道事業の参入となった。(ただし、後日機電工程の調達先が日立からイギリスのインベンシス社(後にシーメンスAGが吸収し、現在はシーメンス・モビリティ)に変わっている。)
事業主体は当初は、国営鉄道・台湾鉄路管理局であったが運営事業者については未定であった。一時は台北捷運■紫線としての運行が有力だったが、その後、2009年5月9日に台北市政府、新北市政府と桃園市政府が設立した桃園捷運公司による運営とすることが正式に決定した。そのため、既に発注された直達車の車内に「大衆捷運法」で構内、車内での飲食禁止が明文化されているにも関わらずドリンクホルダーが残る形となった(なおこれはスマートフォン用ワイヤレス充電器として再活用されている)。
開業のための条件
- 直達車(急行)と普通車をそれぞれ毎時片道6本(始発駅で等間隔の場合5分毎、中間駅では待避などで3分毎)。
- 台北車站駅からの所要時間は直達車が35分、平均速度60km/h(空港まで)、普通車が70分(環北まで)を前提としたダイヤで、より負荷をかけた試運転を実施。
- 第三者機関の安全認証を取得(当路線は世界的な安全認証機関であるロイド・レジスター社の鉄道部門を買収したリカルド社が請け負っている)
以下は台湾における大衆捷運法における規定であり、当路線に限られた条件ではない
- 連続7日間における可用性が99%以上(1日の遅延総時分が運行総時分の1%未満、すなわち5時-24時の19時間であれば19x60x0.01=11.4分/日以内の安定度を7連続営業日で達成する)
- 5分以上の遅延発生が2件を超過しない。
- 災害、テロなどいくつかの特定条件を想定した模擬訓練を行う。
- 各地市政府あるいは第三者認証機関による初回監査(中文:初勘)→不具合があれば指摘事項を改善し、最終監査を申請
- 交通部による最終監査(中文:履勘)→再度改善事項の指摘がなされた場合、それを改善
- 交通部による認可
上記事項、とりわけ1,2は実際の通常運行ダイヤとは異なっていても、沿線の突発的なイベント輸送などで増便を迫られた際に必要になる。
項目1については、前年末の開業を断念し、当年内の開業を目指していた2016年2月の時点で「ホームドアや分岐器の誤作動、信号との不連動、先行列車との異常接近、スリップ、ブレーキ異常」などの不具合件数が4,500件以上で可用性も90%にすら到達しなかった。馬英九政権から蔡英文政権移行への空白期であったこともあり、交通部では減便による暫定開業も視野に入れていたものの、台北市政府捷運工程局の副処長、台北市交通局局長や台北捷運公司董事長を歴任した賀陳旦が5月20日に発足した蔡政権で交通部長に任命されると、賀陳は第三者による調査チームを発足させ、問題点の洗い出しと条件達成なしでの暫定開業は認めない旨を強調した。
そして受注企業や台北捷運公司の支援も得て桃園捷運公司は8月末に7日間の可用性96%(数日では99%以上、5分以上の遅延も2件)を達成、年内開業に向けて大きく前進した。
その後11月上旬まで試運転を繰り返したものの、7連続営業日では99%に僅かながら及ばず、上記4-7の監査で実質2-3ヶ月を要するため、年内開業を再断念し、翌年上半期に延期することになった。11月20日に、前提条件である可用性は99.52%、5分以上の遅延を1件に抑えることができた。2017年1月に交通部から営業許可が下り、2017年3月に開業した。
沿革
開業予定は再三にわたって延期されていた。
- 2006年
- 2月27日:三重駅-環北駅着手
- 6月26日:三重駅-環北駅土建工程起工式典
- 9月25日:台北車站駅-三重駅着手
- 2007年
- 5月2日:台北車站駅-三重駅土建工程起工式典
- 2008年
- 12月31日:台北車站駅ビル(台北双子星の地下部分)起工
- 2010年
- 11月:機電系統工程開始。
- 2011年
- 8月5日:土木工程完工。
- 2013年
- 5月8日:交通部高速鉄路工程局、丸紅と下請け業者の契約トラブルなどを理由に開業を2年後の2015年末に再延期
- 2014年
- 10月24日:台湾桃園国際空港 - 徐匯中学駅で当路線を雁行する「捷運機場線先導公車」運行開始(三重客運運行の986路、その後は蘆洲に延伸)。
- 2016年
- 2月23日:交通部高速鉄路工程局が台北車站駅完工を宣布。
- 11月21日 - 前日までの1週間で開業条件である可用性99%をクリア。
- 12月1日 - リカルド社から第三者安全認証証明を取得。
- 12月3日 - 交通部による2日間の初回審査。
- 12月4日 - 初回審査を条件付きで通過。英語案内の不十分さや標識のわかりにくさなど、指摘事項の改善が認められれば最終審査申請となる。
- 12月13日 - 通勤利用者の意見を反映し運賃改定。
- 12月29日 - 交通部による2日間の最終審査。
- 12月30日 - 交通部による最終審査が完了。41項目のうち8項目の開業前要改善事項(英語表記不備など)を指摘。改善後に開業申請となる。
- 2017年
- 1月20日 - 最終審査での事前要改善事項の対応を完了し、交通部に開業認可申請。
- 1月25日 - 交通部、桃園捷運公司に当路線の営業を認可し、捷運公司がプレ開業日を2月2日と発表。
- 2月2日 - 台北車站駅 - 環北駅間1ヶ月間のプレ開業。ただし2週間は予約団体の無料体験乗車のみで、1両あたり40人、利用できる駅も台北、新北産業園区、長庚医院、山鼻、高鉄桃園、環北の6駅に限られ、運行時間も8-16時。
- 2月16日 - 全駅での個人旅客への無料体験乗車を開放。整理券を所持した旅客のみで、1日最大2万人に制限される。
- ITCI(インタウン・チェックイン)を開始。搭乗便出発時刻3時間前まで。(#インタウン・チェックイン節参照)
- 2月19日 - 林口と山鼻の駅間にあるA9a緊急停車駅(非常時用)の副本線へのドイツBWG製分岐器のクロッシング部レールに幅2-5mmの亀裂が見つかったが、即時応急処置を行い21日に当該部分を交換しており、高鐵局捷運工程局は正式開業には影響がないとしている。
- 2月25日 - 整理券方式での制限を解除。
- 2月27日 - 228記念日の連休に伴い、運行時間を7-21時に拡大。
- 3月2日 - 台北車站駅 - 環北駅間正式開業。運行時間帯が通常の6-24時に、台北駅でのITCIも6-21時半となり、運賃は1ヶ月間半額。
- 4月2日 - 正規運賃適用。
- 12月1日 - 愛金卡(icash2.0)対応。
- 2018年
- 3月1日 - ダイヤ改正により早朝深夜の空港発列車を中心とした増発と、数本の直達車については平日は朝夕時間帯、土休日はデータイムに高鉄桃園駅・環北駅への延伸がなされる。(その後、5月15日以降は高鉄桃園での直達車停車時間拡大に伴い、環北発車時刻を1分繰り上げる。)
- 10月1日 - 運賃を全区間で10元割引する優待運賃を開始。将来的には、台北捷運の運賃水準に合わせるとしている。
- 2019年
- 3月1日 - 23時台に環北発機場第一航廈行き、台北車站発機場第二航廈行きの普通車を各2本増発し、終電を繰り下げるダイヤ改正。
- 4月8日 - 三重客運運行の先導公車986路を運行停止
- 5月1日 - QRコードを利用したチケットレスサービスを提供開始。桃園捷運公式アプリから購入する。
- 2020年
- 1月16日 - クレジットカード各社のNFCコンタクトレス決済を導入。Visaのタッチ決済、Mastercardコンタクトレス、銀聯(閃付)は即日(JCBは6月予定)。
- 1月31日 - 環状線開業と同時に新北産業園区駅でのITCIサービス開始。。
中壢延伸線
台鉄縦貫線の桃園市内立体化が高架式から地下式に改められたことで当路線と接続する中壢駅で捷運駅部分のホームや両渡り線部分の深度を更に下げる設計変更が行われたため、先に着工した老街渓駅より遅れがみられるほか、機電工程入札も既存区間を担当したシーメンスが不参加などで不成立を繰り返していた。 また、緑線(中壢延伸線)との接続は従来の中壢駅ではなく本路線を中壢体育園区まで延伸する方式が2019年末に採用された。2路線の機電工程はともにシーメンス系が採用されたことで機場線から緑線への直通可能な仕様となる。その後、環北駅を境に制御・信号システムが既存区間と延伸区間では異なる(既存区間はシーメンスが吸収した英・インベンシス、延伸区間はシーメンス純正)ことが表面化し、その統合に手間取っているため、2022年末を予定していた老街渓延伸は再延期されることになった。
- 2013年12月28日:起工。
- 2019年9月14日:2014年以降、過去12回不成立だった機電工程入札はシーメンス連合の受注が確定し、市長鄭文燦は老街渓延伸について1年前倒しの意向を表明した。
老街渓延伸
2023年3月20日に老街渓直通を前提とした時刻改正が実施され、同月に施設が桃園捷運公司に引き渡されるとともに、総合試運転での基準をクリア。4月21日に鉄道局による初回監査を、6月18日に交通部による最終監査を通過した。 交通部は7月7日に営業許可を、7月14日に完工を宣布した。
- 2023年7月31日、老街渓延伸。延長運行は普通車のみで、直達車は従来通り環北駅で折り返す。
中壢駅延伸
- 2028年7月:中壢駅へ延伸開業予定。
車両
3扉固定クロスシートの急行型車両(2000型)は1編成5両で11編成が、3扉ロングシート各駅停車型車両(1000型)は1編成4両で20編成が配備される。5両編成の急行型のうちの1両は沿線のチェックインカウンターで引き受けた荷物の専用車両である。開業時にはそれぞれ8編成、12編成で運用され、残りは予備運用となる。 車両基地は坑口駅付近の沿線に蘆竹機廠が、領航駅付近の沿線に青埔機廠が設けられる。仕様諸元は以下の通り。 なお、車両番号は数字だけ付いている。共に川崎重工業で製造され、1000型(普通車)の一部は台湾車輌公司でのノックダウン生産となっている。
サービス
- 開業当初は直達・普通各15分毎の終日7.5分間隔で運行。将来的には各12分間隔の毎時各5本、計10本での運行を目指している。
- 全駅構内および全列車内で無料Wi-fiが提供される(登録に煩雑な手続きは不要で、1回で30分)。
- 券売機は英語、日本語を含む10ヶ国語に対応。
台北車站、新北産業園区、長庚医院、高鐵桃園の各駅および車内では桃園空港発着便がリアルタイムで案内表示される。
インタウン・チェックイン
- 台北車站
インタウン・チェックインカウンターは開業時からチャイナ・エアラインおよびエバー航空、それぞれの傘下であるマンダリン航空およびユニー航空が参加し、2018年11月15日以降はキャセイパシフィック航空、香港ドラゴン航空、エアアジア、エアアジア X、エアアジア・フィリピンも利用可能となった。このサービスはMRTの利用客に限らず利用可能。開業後2年間は無料の見通し。免税店で購入した物品の事後租税払戻手続もここで可能となる。
- 新北産業園区駅
対象はチャイナエアライン、エバー航空、マンダリン航空、ユニー航空の台湾系4社で、利用可能時間は6:15から21:00。台北駅同様当日便の出発時間3時間前まで。
運転本数
開業時点の日中の運転本数は以下の通り。
- 直達車は台北~空港間では終日15分間隔での運行。長庚医院駅で普通車と緩急接続を行う。環北方面直通は時間帯は曜日によって異なり、本数も限られている。
運賃
- 運賃は直達車、普通車ともに同一である。
- 単程票(片道大人)は初乗りが30台湾ドルで上限は160台湾ドル(2018年10月1日より2025年1月1日まで、一律10元引きの優待運賃適用で初乗り20台湾ドル、上限150台湾ドル。2025年1月2日より、桃園機場発着でない乗車券に限り、一律5元引きの優待運賃適用)。
- 65歳以上の高齢者(2022年より居留証を所持する外国人も適用)、障害者は半額、6歳以上12歳未満の小児(中華民国国籍者に限る)は2割引でいずれも窓口での販売。
- 悠遊卡(Easycard)、一卡通(iPASS)(いずれも正式開業時)、愛金卡(icash2.0)(2017年12月より)の台湾での4大IC乗車カードのほか、桃園市政府発行の電子市民カード(悠遊卡か一卡通に格納)や各種電子決済の計8種に対応する。
- 一日票
- 350元(2018年10月1日より320元)で当日直達車、普通車に乗り放題。期間限定で、優待一日票(280元)も発売されている。
- 台北捷運ジョイントチケット
- 空港駅と桃捷台北駅の往復に台北捷運の全線48/72時間乗り放題パスがセットになっている。価格は48時間が520台湾ドル、72時間が600台湾ドル。空港駅、桃捷台北駅の窓口および桃園国際空港入国フロアの捷運サービスカウンターで販売。
- 回数票
- 片道運賃の10倍の値段で12回乗車可能。発売日から90日間有効。駅窓口で購入可。
- 団体運賃
- 10人以上の団体旅客に適用(20%)
- 定期運賃
- 7、30、60、90、120日の個人用定期乗車券(割引率はそれぞれ25%、30%、35%、40、50%で、1日2乗車・月間21日で算出)
- 発駅または着駅が同一駅の団体用100日定期乗車券(50%割引)などがある。
- 2023年7月1日より使用開始した、基隆市、新北市、台北市、桃園市の公共交通機関が乗り放題となる「基北北桃都會通」も利用可能。
- 空港内ターミナル、ホテル(A12-A13-A14a)相互間で上記IC利用時に限り無料となる。
駅一覧
- 計画中の駅名については中文、英文ともに仮称
- 斜字体は建設中または計画中の路線
- 直達車については、●は停車を、|は通過を、▲は高鉄桃園駅・環北駅延伸列車專用を表示(環北行直達車は朝夕時間帯、土休日はデータイム6往復おり)。
- 手荷物については○は受託手荷物のインタウン・チェックインを、|は取扱なしを表示(新北産業園区と高鉄桃園は計画段階)。
- 二重駅・輔大医院駅・機場第三航廈駅の3駅については路線開業と同時ではなく、いずれも数年後開業予定である。
- ※交通部高速鐵路工程局の資料に基づいた累計キロ。
利用状況
1日平均乗車人員。緑は最低値、赤は最高値を表す。
脚注
註釈
出典
外部リンク
- 交通部高速鉄路工程局捷運工程處 (繁体字中国語)
- 臺灣桃園國際機場聯外捷運系統建設計畫 (繁体字中国語)
- 機場捷運(交通部高速鐵路工程局)(繁体字中国語)
- 台北市政府捷運工程局 興建路線-台灣桃園國際機場捷運(繁体字中国語)
- 機場捷運三重站—臺北車站簡介(台北市捷運局北區工程處)(繁体字中国語)
- 機場捷運延伸線計畫 (繁体字中国語)
- 日商丸紅國際股份有限公司交通專案分公司 (繁体字中国語)
- 桃園大眾捷運股份有限公司 (繁体字中国語)




